ノーコードWeb制作でも、アクセシビリティには対応できます。ただし、ツールを使うだけで自動的に対応できるわけではありません。色や文字サイズなどの見た目だけでなく、キーボード操作、画像の代替テキスト、見出し構造、フォームの使いやすさまで、設計・入力・公開後の確認が必要です。
ノーコードWeb制作でアクセシビリティ対応が難しくなりやすい理由
ノーコードツールは、HTMLやCSSを直接書かずにページを作れる一方、出力されるコードや操作部品の仕様を細かく変更できない場合があります。そのため、制作者が内容を正しく設定しても、ツール側の仕様によって対応できない項目が残ることがあります。
特に、次のような機能はツールによる差が出やすい部分です。
- キーボードだけでメニューやダイアログを操作できるか
- 入力欄とラベルの関係が正しく設定されるか
- 見出しのHTML構造を自由に選べるか
- 画像に代替テキストを設定できるか
- フォーカス位置やフォーカス表示を変更できるか
- 自動再生する動画やスライダーを停止できるか
したがって、ノーコードWeb制作では「設定で対応できる項目」と「ツールの制約で対応が難しい項目」を分けて確認することが重要です。
制作前に決めるアクセシビリティの基準
最初に、どの利用者を対象にし、どの程度まで対応するかを決めます。基準がないまま制作を始めると、公開直前に大幅な修正が必要になることがあります。
Webアクセシビリティの確認には、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)などの基準が使われます。WCAGでは、情報を知覚できること、操作できること、内容を理解できること、さまざまな環境で利用できることなどの観点から、Webページの問題を整理します。
業務サイトや公共性の高いサイトでは、社内の方針や契約、適用される法律・ガイドラインも確認してください。特定の基準を満たしていると断定するには、対象ページや確認方法を明確にした検証が必要です。
ノーコードWeb制作で確認する項目
1. ページの構造を見出しで整理する
見出しは、文字を大きく見せるためだけの装飾ではありません。ページの内容を階層化し、利用者が目的の情報を探しやすくするために使います。
- ページの主題には、ページ内で一つの主見出しを設定する
- 大見出しの下に、その内容を説明する小見出しを置く
- 見た目を整える目的で見出しレベルを飛ばさない
- 見出しだけを読んでも内容の流れが分かるようにする
ノーコードツールに見出しレベルの選択機能がある場合は、デザインではなく内容の階層に合わせて選びます。見出しを自由に設定できない場合は、重要なページで問題にならないか、制作前に確認しましょう。
2. 画像に目的に合った代替テキストを付ける
画像の代替テキストは、画像を表示できない場合や、スクリーンリーダーで内容を確認する場合に使われます。画像の役割に応じて、短く具体的に設定します。
- 内容を伝える画像:画像が伝える情報を記載する
- リンクやボタンの画像:リンク先や操作内容を記載する
- 文字を含む画像:画像内の重要な文字を補う
- 装飾だけの画像:不要な説明を加えず、装飾として扱う
「画像」「写真」だけの説明や、検索キーワードを詰め込んだ文章は、画像の役割を伝えにくくなります。画像を見られない人が、本文と同じ目的を達成できるかを基準に考えます。
3. 色だけで情報を伝えない
色の違いだけで、必須項目、エラー、選択状態などを示すと、色を区別しにくい人には情報が伝わりません。
たとえば、エラー表示では色の変更に加えて、「入力が必要です」「形式が正しくありません」といった文章も表示します。リンクも、本文中で色だけを変えるのではなく、下線など別の手がかりを加えると確認しやすくなります。
背景色と文字色の組み合わせは、文字の大きさや太さによって必要なコントラストが異なります。配色を決める際は、コントラストを測定できるツールで確認し、薄いグレーの文字や写真の上に置いた文字をそのまま使わないようにします。
4. キーボードだけで操作できるか確認する
マウスやタッチ操作を使えない人も、キーボードなどでWebページを操作します。ノーコードで作ったページも、キーボードだけで主要な操作が完了できるかを確認してください。
- ページを開き、マウスを使わずにTabキーで移動する
- 現在選択されているリンクやボタンが見た目で分かるか確認する
- Enterキーや矢印キーなどでメニュー、タブ、ダイアログを操作する
- 開いたメニューやダイアログから抜けられるか確認する
- フォームの入力から送信まで、キーボードだけで完了するか確認する
フォーカスが見えない、操作順が不自然、開いたメニューから抜けられないといった問題がある場合は、設定で直せるかを確認します。修正できない場合は、その機能を別の部品に置き換えることも検討します。
5. リンクやボタンの目的を明確にする
「こちら」「詳しく見る」だけでは、リンク先が分かりにくいことがあります。リンクやボタンの文字は、単独で見ても目的が分かる表現にします。
- 悪い例:「こちら」
- 改善例:「料金プランを確認する」
- 悪い例:「送信」だけで、何を送るのか分からないフォーム
- 改善例:「お問い合わせを送信する」
同じページに同じ「詳しく見る」リンクを複数置く場合は、周囲の文章を含めて目的を判断できるか確認します。ツールによっては、リンクの名前をスクリーンリーダー向けに別途設定できることもあります。
6. フォームを入力しやすくする
フォームでは、何を入力する欄なのか、必須かどうか、どの形式で入力するのかを明確にします。
- 入力欄の近くに、項目名を表示する
- 必須項目には「必須」と文章で示す
- 郵便番号や電話番号など、入力形式を説明する
- エラーの内容と、修正方法を具体的に表示する
- 入力内容を確認・修正できる画面を用意する
プレースホルダーだけを項目名の代わりにする方法は避けます。入力を始めると説明が消えるため、何を入力する欄か分からなくなりやすいからです。
7. 動画やアニメーションを制御できるようにする
自動再生する動画、点滅する要素、動き続けるスライダーは、集中を妨げたり、内容を読みづらくしたりすることがあります。
- 動画には停止・一時停止の操作を用意する
- 音声を自動再生しない
- カルーセルには前後移動や停止の操作を用意する
- 重要な情報を動きだけで伝えない
- 動きを減らす設定に対応できる場合は利用する
ノーコードツールの標準部品に停止機能がない場合は、装飾的なアニメーションを減らす、静止画に置き換えるなど、機能自体を見直す方が確実なことがあります。
ノーコードツールを選ぶときの確認ポイント
ツールを選ぶ段階で、次の項目を公式の仕様や実際の編集画面で確認します。機能名が同じでも、設定できる範囲はツールによって異なります。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 見出し | 見出しレベルを正しく選べるか |
| 画像 | 代替テキストを画像ごとに設定できるか |
| リンク・ボタン | 目的が分かる名前を設定できるか |
| フォーム | ラベル、必須表示、エラーメッセージを設定できるか |
| キーボード操作 | メニューやダイアログをキーボードで操作できるか |
| フォーカス表示 | 選択中のリンクやボタンが視覚的に分かるか |
| コードの追加 | 必要な場合にHTMLや属性を追加・調整できるか |
| 公開後の確認 | 実際の公開ページを検証できるか |
「アクセシビリティ対応」と表示されていることだけで判断せず、制作するページで必要な設定を実際に試すことが大切です。特に、フォームやポップアップなどの操作部品は、サンプルページだけでは問題を見つけにくい場合があります。
公開前に行うチェックの手順
自動チェックだけでは、文章の分かりやすさや操作の自然さまでは判断できません。ツールによる検査と、人が実際に操作する確認を組み合わせます。
- 見出しの順番、リンク名、画像の代替テキストを確認する
- 文字色と背景色のコントラストを確認する
- 画面を拡大しても、文字やボタンが重ならないか確認する
- キーボードだけで主要な操作を行う
- スマートフォンの狭い画面でも、横スクロールなしで読めるか確認する
- フォームにわざと誤った値を入力し、エラーの内容と位置を確認する
- スクリーンリーダーなどで、見出し、リンク、フォームの順序を確認する
- 複数のブラウザーや端末で表示と操作を確認する
自動検査で問題が見つからなかった場合でも、アクセシビリティに問題がないとは限りません。自動検査は、機械的に判定できる一部の項目を確認するものとして利用します。
ノーコードだけで対応できない場合の判断
見出し、代替テキスト、色、文章、フォーム設定などは、ノーコードの設定で改善できることが多い項目です。一方、キーボード操作、フォーカス管理、複雑なダイアログ、動的なエラー表示などは、ツールの仕様によって対応が難しくなることがあります。
対応できない問題が見つかった場合は、次の順番で判断します。
- 設定や部品の変更で解決できるか確認する
- 複雑な機能を、より単純な部品やページ構成に置き換える
- 必要な範囲だけコードの追加や専門家の確認を検討する
- 解決できない制約を記録し、代替手段や公開範囲を検討する
アクセシビリティを高めるために、最初から複雑な演出や独自操作を減らすことも有効です。見た目の再現よりも、情報を読めて、操作を完了できる構成を優先すると、ノーコードの制約にも対応しやすくなります。
ノーコードWeb制作で対応するときの要点
ノーコードWeb制作でもアクセシビリティ対応は可能ですが、ツール任せにはできません。制作前に対応基準を決め、見出し、画像、色、キーボード操作、フォーム、動画を確認し、公開前に実際のページを操作します。
設定で直せる問題は制作段階で修正し、ツールの制約で直せない機能は、部品や構成を見直すことが基本です。対応状況を断定する前に、自動検査と人による操作確認の両方を行いましょう。







